#1 発覚
斎藤洋二36歳は妻の浮気を知った。妻が家に忘れたスマホの画面を見てしまったからである。
相手は「たかしくん」。ちなみにアイコンは美味しそうな苺大福だ。普段は苺大福が好きな洋二だが、今はそのアイコンの苺大福にさえ、とても憎さを感じている。
妻の浮気を知り、落胆している洋二だが、悲劇はそれだけでは終わらない。
まるで、浮気のついでのように自分の余命も知ったのだ。それは妻がたかしくんに送っていたメッセージで。
洋二が見ているスマホの画面には「旦那、寿命あと1年みたい。今日先生に言われた」とある。
洋二は「嘘だろ?」と思う。洋二は昨日まで入院していたが、それは検査入院だと聞いていた。しかし洋二は思う。いや、待てよ。検査入院ってよくあるパターンじゃないか。
とりあえず悪い所があるから検査しましょうとなる。そして検査のために入院する。でも、検査の結果もう手の施しようがないことがわかる。そこで妻に余命宣告がある。その余命宣告を自分にするか迷う。そこで妻は超葛藤して、思わず浮気相手にこぼす。俺、今偶然それを見ている。今ここか? 今そこなのか?
いや、そもそも浮気って何だ?妻がそんなことするか?いや待てよ、余命が分かったのと、浮気はどっちが先だ?余命がわかって、耐えられなくなって思わず浮気したのか?いや、浮気してて余命がわかって、え?そうなのみたいな感じか?いや、そっちはあんまり考えたくないな。洋二は部屋をグルグル歩き回りながら考える。
そこで妻のスマホにメッセージの着信がある。洋二は恐る恐る画面を見る。すると「たかしくん」とある。洋二、思わず開く。
そこには「マジ?やばいね」とある。「・・・いや、やばいってどういう意味だよ」と洋二は呟く。